大学地域連携学会について

大学地域連携学会　設立趣意書

大学教育の限界

少子高齢化社会をむかえるなかで、大学のあり方も変化せざるを得ない状況にあります。大学は第一義的に「学生」のために存在していますが、少子化の波は大学経営を直撃し、これによって学生教育のカリキュラムは多様性を失い、硬直化しつつあります。もはや大学の正課だけで多様な学生のニーズに応えられるような質の高い教育を行うことは困難な状況にあるといえるのではないでしょうか。また、大学がその知の中心に据えてきた形式知、学問知の限界が語られるようになり、実務的な教育・研究によって会得できる実践知が大きな注目を集めている今日、大学の教育・研究は大きな見直しを迫られている現実があります。

なぜ大学地域連携なのか

このような状況のなか、2005年の中央教育審議会答申『我が国の高等教育の将来像』において、地域連携、産官学連携、国際交流等といった「社会貢献」が教育・研究に続き大学の第三の使命と位置づけられました。さらに、2007年の「教育基本法」の改正において、「大学は、その目的を実現するための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする」と明文化され、大学にはこれまでの研究・教育の他に社会貢献が求められる時代となったのです。前述した現在の大学教育を取り巻く状況をふまえると、大学に求められることとなった「社会貢献」は、大学教育が最優先すべき重要な課題となってきました。そして、大学は「知の宝庫」であるとともに地域社会に貢献し得る「人材の拠点」でもあります。今こそ大学と地域との関係を問い直すべきだと思います。

文科省の「21世紀の大学像と今後の改革方策」で示された大学改革の基本理念を引くまでもなく、これからの高等教育には「課題探求能力の養成」とこれを実現するための「教育研究システムの柔構造化」が求められています。大学を軸として地域社会・産業界、さらには国際社会との連携・交流を一層深め、ローカルとグローバルの両視点を備えた時代を担えるグローカルな人材を育成するためには、地域連携活動を軸とした学生教育や研究を推進していくことが求められるのではないでしょうか。

大学地域連携学会の設立を

このような時代の要請に応えるためには大学を起点とし、国内外の地域社会・産業界との連携・交流に関する実践と研究の体系化を進めることが求められます。さらに、これらの実践的活動を担う人材の育成に関する教育・研究も重要な課題となります。社会の多様化が進む現代、私たちはこれらの必要性を痛感し、そのための実践と研究の場を設け、さまざまな学問領域を横断して大学地域連携を考える学会として、ここに大学地域連携学会を設立いたします。この学びの共同体に賛同される方々のご参加を心より歓迎申し上げます。